ピンク・スバル
PINK SUBARU
日本、イタリア
2010
小川和也 監督
アクラム・テラウィ、小川和也 脚本
アクラム・テラウィ、、、ズベイル(レストランのコック)
ラナ・ズレイク、、、アイシャ(ズベイルの妹、結婚を控えている)
ジュリアーナ・メッティーニ
ダン・トレーン
ニダル・バダルネ
ミカエル・ヤナイ
サルワ・ナッカラ
タイベ(パレスチナとの境界線沿いの街)から自分の盗まれた車を探してあちこちを行き来するロードムービーとも謂えるか。
20年間仕事で稼いだ金でメタリック・ブラックのスバル・レガシィを購入しその夜知人を呼んでパーティ~食事会を催し、大いに盛り上がるが、翌日何と車が盗まれているのだ(笑。それはショックである。だがそうしたことが多発している地帯であれば、それなりの防衛策を打っていないというのも何とも杜撰である。保険も買った曜日の関係でまだ入っていなかったというし。
主人公は泣いたり騒いだり取り乱し、妹の結婚までには、車を探し出したいとあちこち聴きに回るのだが、、、
警察には盗難届は出さないのか、、、機能していないのか、、、誰も警察など口にする者はいない。
自分たちで探すと言っても、、、するとその道の専門家と言うか自らもそれで食ってるため事情に詳しい人物などに頼ったりもする。だが、金だけとって役には立たない。実際探している感じもなかった。カモにされるだけか。
何と言っても御国事情が凄い。この境界地区(というよりパレスチナ)には、まともなディーラーの数が足りず、車を持ちたいというなら盗むしかないとか、、、。盗んでバラシて組み立てて売り渡すことが産業化しているらしい。それで需給のバランスを保つとは、何たる状況、、、。
では、ズベイルみたいに生真面目に働いて漸く夢のスバルを買った者は堪ったもんではないだろう。
このスバル(富士重工)であるが、イスラエルをマーケットにした(輸出した)のは日本自動車企業では先駆けで、一時期は車と言えば「スバル」であったらしい。スバルを持てたら、いっちょ前であったという。
他のメーカーは中東の方がマーケットが大きいということで皆そっちで頑張っていた模様。今ではイスラエルにはどのメーカーも進出しているらしいが。
その道の業界のカリスマ的存在の「スバルの母」などと言うのが出てきたり、スバルが恋しくて魘されるズベイルのイメージ~悪夢か?の中ではスバルの精みたいなのが出てきたり、わざとらしく妙に浮きまくる日本人が出てきたりするなか、政治性も宗教性も微塵も観られない凡そ彼らの日常とはかけ離れた感じのハチャメチャな流れで最後まで行く。
妹の結婚の日までには、見つけるという主人公の決意~目標もあり、「結婚式まであと何日」が出るのは、面白いが。
(結婚自体も危ぶまれるところにくると笑えなくはないが)。
コメディにせよ、リアリティが感じられない分、嘘くささが充満してきて、入り込んで笑えない。
人物像もらしくないのだ。まるで日本人みたいな人物造形に思える。そういえば効果音も微妙であった。
特に日本人は、役者であろうか、それとも美術さんとかに急遽頼んでおっつけ刃でやってもらった人なのか、噺をペラペラにチープ化するのに貢献している。
日本人が出ていなければ、向こうの役者の演技はしっかりしていた為、コメディロームービーとしてそれなりに成り立ったと思うが、、、。
最後に主要登場人物がほとんどスバルの母のところに集まり、犯人も分かり、レガシィもピンク色に塗られてはいたがみつかり、という無理やり感ある大団円に持ってゆくが、ここでも日本人の関りが妙ちきりんで話が浮いていた。
寿司とかラーメンとか日本語の歌「ケセラセラ」とか着物とかも出していたが、最後のエンドロールでは歌が「昴」(谷村新司)である、いくらスバルだからって、ちょっとそれは無いだろう、、、で終わり。
向こうの役者がよかったこともあり、いらん所を削り作り直せば、それなりのものは出来たろうな、と思わせる映画であった。
原案と言うか着眼点は良いと思うので、、、。
AmazonPrimeにて